東京地方裁判所 昭和44年(秩ろ)34号 決定 1969年6月26日
被制裁者 弁護士 山根二郎
決 定
(住所氏名略)
右の者に対する法廷等の秩序維持に関する法律による制裁事件について、次のとおり決定する。
主文
本人を過料三〇、〇〇〇円に処する。
理由
(事実の要旨)
本人は、第二東京弁護士会に所属する弁護士であるが、昭和四四年六月二六日、東京地方裁判所刑事第五〇六号法廷に、被告人橋本善和ほか一一名に対する兇器準備集合等被告事件の第一回公判期日に弁護人の一人として出頭したところ、同日午前一〇時一三分裁判長は開廷を宣し、つづいて、出頭した被告人久末泰史、同平野健、同北村充成の人定質問を始めようとした際、右被告人三名が一斉に立ち上がり「何故、統一公判を開かないのか、それを説明しろよ」などと口々に言い、裁判長が再三制止し着席を命じ、被告人らのけん騒を制しながら被告人久末泰史の人定質問に入ろうとしたところ、本人は「審理に入る前に、この構成する裁判所が違法である」旨発言し、つづいて発言しようとしたので、裁判長が被告人の人定質問の妨害となるので、秩序維持のため人定質問が終るまでの間、本人の発言を禁止する旨の命令を発し、被告人久末の人定質問を続けたが、なおも本人は、ほか一〇数名の弁護人とともに弁護人席に総立となり、裁判長の発言禁止にもかかわらず、「我々弁護団の意見を聞いて下さいよ」「我々はこの裁判所が違法であることを主張しようとしているのです。」などと口々に発言し、この間裁判長は秩序維持のため全弁護人に着席命令を発したが、本人はこれに応ぜず、かつ裁判長の再三の発言禁止にもかかわらず、当裁判所の構成が違法であることを主張し続けて審理に入ることを妨害し、次いで、同日午前一〇時二九分ころ裁判長が被告人平野健の人定質問に入つたが、本人は、裁判長に発言を求め、前同様秩序維持のため発言を禁止されたにもかかわらず、「我々は発言しに来ているのです。弁護権の行使に来ているんです。したがつて、裁判所が違法に構成されているかどうか当然述べる権利があります。」と述べ、裁判長が「それはルートにのつてから十分聞きます。」と答えたのに対し、本人は「人定質問をする資格があなたにはないと言つているんです。なぜなら裁定合議委員だつたからです。」と述べて右発言禁止命令に従わないため、本人に退廷を命ずるや、退廷する途中、なおも裁判長に向つて「あなたは裁判長の資格がないんだ」と放言して審理の進行を妨害するとともに不穏当な言動をなし、もつて秩序を維持するため裁判所が命じた事項を行なわず、裁判所の職務の執行を妨害し、かつ裁判所の威信を著しく害したものである。
(適用した法条)
法廷等の秩序維持に関する法律第二条第一項